June 09, 2008

【jane communication】

人生に感動と生きがいと愛を、
人が与えてくれるとはいえ、
誰にも会いたくない日がひょっこり現れる。





稲村奈保子は、その苗字からジェーンと呼ばれていた。
サザンの曲にも出てくる湘南の波の名前だ。


ジェーンは今日は携帯の電源を切って、
覚えられない大好きな横文字の作家の本を一冊持って、
街へ出かけた。


誰にも会いたくないが、
見ず知らずの人には会いたい。
ホント人間というのは複雑にできている。


こんな生き方でいいのかな?
と思って自転車をこいでいると、
国道246の真ん中で一匹の茶ネコが、
きょろきょろしている。


向こう側に行きたいらしいのだけれど、
三車線を通る車の高速な群れに少々腰がひけている。


もうすぐ、こちら側の三車線にもその群れがやってくるのが見えた。
ジェーンは咄嗟に叫んだ。



「にゃんこ、こっち!!」



すると、茶ネコは言葉を理解したのか、
ジェーンの方に一目散に走ってきて、



「サンキュー、ジェーン♪助かったワン!!」



と言った。
最初に会話したのが動物だなんて、
結構オシャレな一日があったもんだ。



その後、カフェで本を読み、
飽きたから映画館まで散歩しようとぶらぶらしていたら、
裏路地を少し入ったところに一軒の美術館があった。
こんなところに美術館があるなんて今まで氣づかなかった。
しかも行列ができている。


40分待ちだ。


こんな裏路地で、行列ができるなんて・・・
ジェーンは並んだ。
色々な顔をした人が色々な想いを持って一緒に並んでいる。


入館まであともう少しというとき、
ジェーンは手にしていた本に、
見たことない色彩を放つ虫がくっついているのに氣がついた。


「一緒に見るかい?入場料は私がオゴってあげるよ♪」


ジェーンは虫に話した。
虫は納得したのか、動かない。
色々な色彩の絵を色々な色彩を放つ虫と美術館デートする。
あっという間に時は流れ、閉館時間が来た。


美術館を出ると、今までおとなしくしていた虫が急に空へと飛び立った。
いつの間にか、空には星がうっすらと輝き始めている。




「またね」


「またね」




天から虫の声が降りてきた。
ネコと虫としか話さなかった一日・・・
ジェーンの心の波はおだやかになった。


kaninoasiha at 02:43 │Comments(0)この記事をクリップ! 【Short Story】 

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